先週レンジャーズのダルビッシュ投手がついに長いリハビリを経て復活しましたね。
期待と不安が入り交じる中、想像を遥かに超えるようなパフォーマンスを見せてくれました。
具体的に良かったと思うことを書いていきたいと思います。




1.球威・球速の上昇

単純に速球の力、スピードが上昇していたのが誰の目にも明らかでした。
マイナーでも97マイル98マイルを計測していたとの情報はありましたが、
期待を遥かに上回るものでした。
ピッチャーはスピードではないと言われることがありますが、
平均球速は速いに越したことはありません。
速くなるほど対応する時間が短くなり、
早くからスイングしなければ間に合わないのですから
速いボールが打ちにくいのは必然です。

昨年ブレイクし今やメジャーのエースとなったアリエタ(カブス)も
平均球速が1マイル以上上昇した事が大きな理由の1つです。
それ以上に球速が上昇したダルビッシュ、その打ちにくさは言うまでもないでしょう。

逆に昨年活躍したエース級投手が平均球速が低下して苦しんでいるのも今シーズンです。
それくらい平均球速は重要なファクターです。

トミー・ジョン手術でスピードは上がると言われますが、
それはリハビリ期間にトレーニングや肉体を見直し、
一から鍛え直すからだと思われます。
凄まじいトレーニングの成果とフォームの見直しが功を奏したのでしょう。
それにしても想像を超えるスピードの上昇です。

4シームの軌道も時折小さくカットが入るいわゆる真っスラ軌道になっていて、
より縦回転で真っ直ぐに進んでくる軌道で打ちにくくなっていたと思います。


2.シンカーの軌道の変化

マイナーでの調整登板から予想された通り、
シンカー(2シーム)を速いカウントから投げ込みゴロを打たせようとしていました。

シンカーと言っても、かつての塩崎(西武)や高津(ヤクルト他)、
摂津(ソフトバンク)のようなチェンジアップ軌道のボールとは異なり、
いわゆるシンキング・ファストボール(沈む速球)です。

自分は以前より日本人投手の2シームは横の変化が大きすぎ、
縦の変化が小さいと指摘してきました。
横の変化が大き過ぎると相手打者から見て見切りやすいですし、
ゴロになりにくくあまり効果的ではありません。

ダルビッシュも同様でその傾向がありました。

これを縦の変化を大きく、横の変化を小さく修正してきました。
データ的にもこれは証明されており、縦の変化が大きく、水平方向の変化が小さくなっています。

2014年pitchF/X
38

2016年pitchF/X
42

また、もう1つ見逃せない点がスピンレートいわゆる回転数の減少です。
2シームやスプリット、高速チェンジアップ系の速く沈むボールは
回転数が少ないと空気抵抗が小さくなる分減速が小さくなり、
ボールは沈むため手元で減速なく急に沈むようになると言われています。

ダルビッシュのニューシンカーは回転数が減っており、
より手元で急に落ちるボールとなっている可能性が高いです。
その源となっているのが、おそらくこの新しい握り方でしょう。
やや指を開き2シームで右からリリースしていることがわかります。

このボールを速いカウントからゾーン内に投げ込むことができれば
空振りも狙え、当たってもゴロとなり球数を節約する事ができるようになるでしょう。
やや制球に苦しんでいる面がありましたので、
今後しっかりとホームベース上に投げ切れるかが課題となります。


3.スライダーの高速化

平均球速が上昇しているのですから当然といえば当然ですが、
変化球のスピードも上昇しています。

中でもスライダーは3.4マイルも上昇しています。

スライダーは75マイルから80マイルくらいだともっともフライを打たれやすく
空振りも取れるが、軌道に膨らみがあると打者が途中でスライダーだと分かるため
反応しやすくなる面があります。

CXUOYcQVAAA6ZsQ

ダルビッシュのスライダーは凄まじい変化を見せますが、
2014年の平均速度は80マイル未満となっており、
ややスピードに不満がありました。

カッターも同様に高速化、変化も大きくなっており、
4シーム・2シームの高速化、縦軌道変化と相まって
これまでよりも確実に長打を浴びるリスクが低下しています。


4.高速チェンジアップ 

ややスリークォーター気味のフォームのスライダー投手であるダルビッシュは
どうしても左打者からはボールが見やすく、
スライダーが自分に向かってくるボールとなる為
凄まじいキレではあるもののインローにきちんと決まるか、
高めに抜けない限りは対応されやすく、
やや手間取る所がありました。
先日の登板でも唯一の失点となったタイムリーも
左打者の真ん中に入ったスライダーでした。

その課題を克服する為には対左打者にはやや外に逃げながら落ちる
チェンジアップやスプリットが効果的です。
フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)やグリンキー(ダイヤモンドバックス)らを初め、
多くの一流投手が武器としています。
ストラスバーグ(ナショナルズ)も今季チェンジアップとスライダーの高速化でブレイクしました。

5回表、最後の打者ジェイソを空振り三振に切ってとったボールがまさにその高速チェンジアップでした。
何日も前から考えていたという苦手のジェイソを打ち取る答えがこれだったのでしょう。


今後も高速のスライダーとカッター(スラッター)をインローに、
高速チェンジアップをアウトローに決めることができれば
左打者も苦もなく抑えられることと思います。
元から右打者には強力なスライダーがあり打たれない訳ですから
対左を克服できれば最強な訳です。


以上のように球威の増した速球、変化球を
自信を持ってゾーン内に投げ込んで勝負できるようになり、
想像を遥かに超えるパフォーマンスと存在感を見せてくれたダルビッシュ。
自分好みのピッチャーに進化していて正直ヨダレが出ますw

チームも投打ともに選手層も有していて良い位置につけており、
ダルビッシュの活躍により2年連続の地区優勝が見えてきます。

昨年トミー・ジョン手術から復帰、活躍しチームをワールドシリーズ出場に導いた
マット・ハービー(メッツ)のようにワールドシリーズで投げる姿を今から想像してしまいます。

そして2017年のサイヤング賞獲得が全く夢物語でないことをたった1試合で証明してくれました。
信じられないような男です。